氷室神社文化興隆財団

瓦(かわら)ものと人間の文化史100

瓦(かわら)ものと人間の文化史100

森郁夫:著 法政大学出版局

本書は、第Ⅰ部で瓦の効用と歴史、第Ⅱ部で古代の瓦について述べています。発掘資料や現存資料をもとに、仏教文化と共に大陸から伝来し、1400年にわたって日本の建築を飾ってきた瓦の製造技術、形態、文様などの変遷をたどる内容です。

いぶし瓦を葺いた家並みは、今や日本的な情景になっています。しかし、身近なものでありながらあまり気にとめない物の一つです。著者は考古学者で、瓦に関する著作も多いです。

奈良の元興寺本堂と禅室の屋根の一部に、飛鳥寺から運ばれてきた瓦が一四パーセント(約600枚)、飛鳥寺創建時の瓦が四パーセント(約170枚)も含まれているというのは驚きです。唐招提寺や東大寺法華堂、法隆寺東院にも奈良時代の瓦が一部葺かれ、鎌倉時代や室町時代の瓦にいたってはいたるところに見ることができると言います。本書は全国各地の資料で構成されているが、奈良県の資料が重要な位置を占め、奈良の寺院の見方や魅力を教えてくれます。