氷室神社文化興隆財団

奈良の仏像

奈良の仏像

紺野敏文:著 株式会社アスキー・メディアワークス

奈良の仏像は、日本の各時代を主導する、あるいは画期となる作例を数多く生んできたが,本書はこれを仏像の歴史の流れに沿って解説します。仏像がもつ造形美への「着眼点」を示すとともに、仏像のもっている表現の意味や、歴史的な位置づけについても踏み込んだ解釈をしています。

とくに、著者が関心をよせる「神仏習合」への美術史からのアプローチは類のないものといえます。たとえば、飛鳥寺釈迦如来坐像の台座の下に大きな石を据えているのは、仏の祭祀を、伝統的な「カミの座」の表象と重ね合わせたものといいます。つまり、日本の信仰の基層となった神仏の習合形態が、この時代にすでに始まっていたと指摘します。「奈良の仏像を語ることは日本の仏像の歴史を語ること」といわれるゆえんは、奈良の諸仏が、その技法の歴史を余すことなく伝えているところにもあります。

本書は、最新の知見にもとづいた仏像ガイドで、中・上級者の関心にも十分応えることのできる内容になっています。