氷室神社文化興隆財団

中世畿内における都市の発達

中世畿内における都市の発達

永島福太郎:著 思文閣出版

本書は、荘園領主都市の京都および奈良の発達と阪神地方の荘園と西宮および堺の発達をテーマとします。著者の学位請求論文の刊行公表です。

この地方の発展は、京都・奈良の発達を支え、京都・奈良の発達がこの地方の発達を促進しました。その陸揚げ地として奈良に対しては木津、京都では淀が港町として発達。阪神地方は奈良・京都の最短距離の海岸線であるため、魚貝の供給地としても重視されました。戦国時代には、堺が急速に発展し、京都・奈良との交流が深くなります。

都市の発達の例として奈良を大きく取り上げ、東大寺郷・興福寺郷の商工人が領主権を越えて「惣」町が成立する経緯が述べられます。一方、吉野郡の吉野・上市・下市、それに今井の寺内町などの小都市の簇出や、石山本願寺の成立にも触れます。畿内の諸都市の発達が、荘園領主、武士、一向宗門徒の動向とともに語られます。

著者は、多くの事例を奈良に求め、広い視野から奈良を語っています。