氷室神社文化興隆財団

寺院・検断・徳政 戦国時代の寺院史料を読む

寺院・検断・徳政 戦国時代の寺院史料を読む

勝俣鎮夫編 山川出版社

本書の構成は、会員の個別論文からなる「研究編」、薬師寺関係の未翻刻史料からなる「史料編」、中世の法隆寺・薬師寺に関する用語を解説した「用語編」の三部構成です。

戦国大名が残した史料で戦国時代の歴史が明らかにできますが、大和武士が残した史料は極めて少ないです。そのかわり、春日社・東大寺・興福寺・法隆寺・薬師寺などにはたくさんの史料が保存されています。

「虹の会」では、寺院史料のうちの法隆寺・薬師寺の史料を月一回のペースで読む例会が持たれました。会員のモットーは、「ゆっくり、丁寧に、記録されている全文を読み、皆が納得するような解釈をほどこすことであった」といいます。

「研究編」では、寺院の史料から、筒井氏の動向や保安・警察的行為(検断)が検討されているほか、薬師寺と唐招提寺の関係、興福寺が持っていた薬師寺の別当(長官)職の沿革などが明らかにされています。史料の翻刻や用語の解説なども含めて、戦国期の奈良地域史の貴重な成果ということができます。