氷室神社文化興隆財団

戦争の日本史11 畿内・近国の戦国合戦

戦争の日本史11 畿内・近国の戦国合戦

福島克彦 著 吉川弘文館

著者は、畿内・近国では、戦国大名たちが領域を広げ、地域を統合していく通俗的なイメージとは相違し、政治権力による合従連衡による戦いが続き、多彩な武将たちによる出入りの激しい戦争が続いたといいます。

中世の大和でも、一五世紀中葉から官符衆徒(かんぷしゅと)の棟梁として筒井(つつい)・古市(ふるいち)氏、国民の中からは越智・箸尾(はしお)・十市(といち)氏らが台頭し始めました。この五氏の主導権争いは隣国河内における両畠山氏の対立とも共鳴し、筒井・十市氏は政長(まさなが)方の東軍へ、越智・古市氏は、義就(よしなり)方の西軍に荷担して争い、南山城へも度々出兵していました。また、永禄九年(一五六六)に三好三人衆と松永久秀が将軍義輝を殺害した後、松永久秀の専横から三好一族との対立は深刻化していきまた。両者の対立は、筒井氏が息を吹き返すきっかけになりました。

このように、大和の戦国時代を理解するのには、畿内・近国の政治状況を把握することが大切です。本書は戦国時代の大和武士のおかれた状況や背景を広い視野から理解できる好著です。