<都>の成立―飛鳥京から平安京へ―
本書は、「古代王権の都」と「平安京の人びと」の二部構成で、飛鳥・藤原京にはじまる日本の古代都城の形成から、平安京までを内容とします。〈都〉をキーワードに、歴史学、考古学、国文学それぞれの立場から、今日まで解明されてきた成果を八人の研究者が論じます。
この内、「天皇陵のゆくえ」では、奈良時代には、山のなかで火葬し、石碑と若干の樹木だけで目印とする新しい御陵のスタイルが作りだされ、古墳型から山丘型に転換するといいます。さらに平安時代の淳和天皇は「自分の骨は散骨せよ」と命じています。嵯峨天皇も「御陵は平らにして、草が生えるにまかせ、なるだけ分からないようにせよ」と遺言し、天皇の薄葬思想が強くなります。その一方で、天皇陵に附属する陵寺という寺院で天皇の供養を行うことが盛んになるといいます。
本書は、古代都城の成立や変遷に関心をもつ読者に、発掘の最新の現場から、歴史学研究の最前線まで紹介します。