氷室神社文化興隆財団

古事記の宇宙(コスモス)―神と自然―

古事記の宇宙(コスモス)―神と自然―

千田 稔:著 中公新書

著者は、『古事記』の自然と神を語るとき、中国で成立した道教との関わりが深いといいます。道教における万物生成論は「気」を基盤として展開されます。この道教の万物生成論にみる「気」を『古事記』では「霊」に置き換えたとすれば、中国道教と『古事記』の生成論は、大変似かよっているといいます。

また、『古事記』の世界は、万物の中に霊魂が宿るとするアニミズムの世界であるといいます。アニミズムの根本は、カミでいっぱいの自然を尊重しながら生きることです。著者はこうした自然に焦点をあて、日本の神話を多角的に分析しています。古代の人にとっては、葦・茅・桃は邪気を祓い、榊・エビカズラ・椿・ケヤキは聖樹として人々の生命の営みに意味を持ち、カラス・鵜・キジ・白鳥などの鳥は、天の神と地上の人間にメッセージを伝える霊なる動物でした。

著者は、地球の「環境問題」が深刻化の様相を呈しつつある昨今、自然界のすべてに神霊が宿り、人間も自然界に属しているという『古事記』のアニミズム的認識こそが、強い倫理性を発信できると考えています。

日本最古の書物をひもときながら、現在の日本を改めて振り替えるきっかけとなる一冊です。