水木十五堂小伝
明治中期から昭和初期にかけて水木要太郎という文人学者がいました。「大和の生き字引」といわれた奈良学者です。 要太郎は、奈良県史蹟勝地調査会の報告書や奈良県各地の郡誌の校閲、「大和めぐり」や「吉野精華」などの大和名所案内、「大和地理歴史」「奈良県地誌」などの教科書類を書いています。また、奈良人形の森川杜園や赤膚焼の奥田木白の伝記、「大和鉄道唱歌」や鉄道の設立趣意書もてがけ、校歌の歌詞を依頼する小学校が県下全域に及びました。資料収集では、古代・中世文書、近世文書、巻子、冊子、折り本、刊本、写本、絵図、地図、古瓦類、建築古材等まで集めています。
初めて会った人に対し、似顔絵を描いた上で「御署名をお願いいたします」と所望した「水木の大福帳」はとくに有名でした。上は総理大臣から役者芸人・子供に至る署名や、要太郎の感想などを毛筆で認めた大福帳も300冊となっていました。
本書は、多芸、多趣味で、雅俗併せのむという生涯を送った要太郎の人間像をさまざまな角度から示した小伝となっています。