氷室神社文化興隆財団

東大寺文書を読む

東大寺文書を読む

堀池春峰:監修/綾村宏・湯山賢一:編 思文閣出版

東大寺文書は、奈良時代から江戸時代に及び、平安時代のものも多いです。平成十年には成巻文書と未成巻文書を一括して国宝に指定されました。本書は、これを記念して東大寺文書のもつ多種多様な面の一コマを紹介することを目的に編集されています。

全体の構成は、特色ある五十六通の古文書を選んで写真版と翻刻文を掲載。東大寺文書と関わりを持つ二十四名の研究者が、文書の伝来や寺領、寺院組織や法会のあり様、文書の形など研究成果の一端を披露する形をとっています。

「文書の伝来」では、ぼう大な文書群を整理した目録や文書の出納記録など、文書の扱われ方の実態を解説。「勧進と檀越」では、伽藍の再興に取り組んだ重源上人や江戸期再建の立役者、公慶上人らの情熱がうかがえます。「寺家と寺領」では東大寺存続のための財源とその経営、寺院組織の変遷を、「法会と教学」では八宗兼学を掲げる同寺の特色や法会の実態を知ることができます。

本書は、史書にはあらわれない生きた史実や、文書の裏に秘められた状況を想像する楽しみを与えてくれます。