仏教と宮座の研究
近畿地方を中心に村の鎮守の祭祀を長老たちが中心になって行う「宮座」が多くみられます。
本書では、この「宮座」に仏教文化が大きく関係していることを論じています。その上で、「宮座」は次のような時代変遷を経たといいます。寺院の仏教法会と深く関わりながら、その法会の役割の一部分を受け持つ組織としてその原型が認められる第一期。寺院内の鎮守から発展した「神社」を祀る惣村・郷村の祭祀組織が第二期。郷村の神社の祭祀組織から近世の村落の「宮座」が独立する第三期。その場合でも常に神社のかたわらの神宮寺(宮寺)の僧侶(社僧)との関係が保たれ、神社と寺院が一体になっていたといいます。これが、明治初年の神仏分離令以降に衰頽して第四期になります。
著者は、仏教的な儀礼と習合して宮座の行事が成り立ち、春はオコナイ、秋は秋祭りとして体系的に完成したといいます。
神仏習合とはよくいわれることですが、村落の場で仏教と関わるなかで成立したのが「宮座」という伝承文化であるといいます。県内各地の「宮座」を事例にして、仏教と神道の交渉史を身近な生活の場で発見しようという興味深い論著です。