氷室神社文化興隆財団

続々茶道文化論集初期茶道史覚書ノート

続々茶道文化論集初期茶道史覚書ノート

永島福太郎:著 淡交社

日本中世史の碩学が、茶道関係の論文を中心に編集された最新作で、多くがここ五年から十年ほどの間の論考です。

著者は、「中世の奈良は、史料が豊富で、大きな比重を示している。南都を除外しては語れない。」として、多くの事例を奈良に求められています。

各論の「茶のふるさと奈良」や「利休と奈良」は、奈良地域を取り上げたもの。奈良の産業や食習慣への関心から「赤膚焼の源流」や「茶がゆ」という論考もあります。茶湯の開山を論じた「珠光研究」、鎌倉時代の名僧明恵上人が描いた大仏供花の図を紹介した「明恵上人と立花」、寛永の三筆の一人松花堂昭乘が隠居した年代を新史料で考察した「松花堂の隠居」なども奈良と縁の深い人物です。「長闇堂—久保権大輔」は、春日社禰宜の久保利世で、小堀遠州と親交のあった代表的な奈良の侘び茶人です。

奈良は古代に注目されるが、中世から近世初頭の奈良の文化がしめた大きさをあらためて考えさせられます。