文人世界の光芒と古都奈良―大和の生き字引・水木要太郎―
水木要太郎は、膨大なコレクションを残したことでも有名です。
その中味は、大和古寺の瓦や経典、中・近世文書、典籍や写本、近世の刊本・刷り物や絵地図・暦本・著名文化人の書簡など多岐に及びます。このコレクションの過半数が国立歴史民俗博物館に収められ、水木コレクションを解明し、その成果を公開することを目的に、共同研究が組織されました。
本書はその成果で、水木のほか、高田十郎・崎山卯左衛門・保井芳太郎といった地域社会の人々の地域史研究を取り上げます。次に、収集家の集まりである集古会や、同時代の文人的研究者の戸川残花に焦点をあてて文人世界の推移を指摘しています。また、水木の日記や水木が著述や編集・校閲に関わった奈良の「名勝案内」を取り上げ、水木が書写した中世文書、水木が収集した近世後期の歌人海野遊翁の書簡群や「大和古物」を対象とした研究が続きます。
各論考とも、水木の行動や彼の集めた膨大で雑多なモノに対する畏敬の念と水木のユニークな個性に対する親近感で貫かれており、その功績と魅力を余すことなく伝えています。