山辺の歴史と文化
天理大学文学部が「天理の歴史と文化」というシンポジウムをベースにして、山辺の歴史と文化を掘り起こした論文集です。
古代では、天理地域の古墳を概観し、奈良時代に栄えた石上(いそのかみ)の市のことや、柿本人麻呂の歌について説かれます。中世にかけては、石上神宮が国家神から地域の神へ変化したことや、八代集に読まれた石上のこと、山辺の説話や霊験譚で神と仏に囲まれた山辺の文化が述べられ、天理市の城に話が及びます。
近世から近代にかけては、上街道での天誅組の追捕事件や、老農中村直三のこと、名産三島ノリの話。明治維新に変容した石上神宮のことや、天理教原典からみた奈良県北部方言のこと。地方名望家中山平八郎の活動や、胞衣(えな)を埋める出産風俗の変化、歌人前川佐美雄と山辺の風景、太平洋戦争下の天理について述べます。
どの論考からも、他の地域や日本全体とのつながりが読み取れ、山辺地域の歴史と文化を再認識させてくれる内容です。