山上宗二記入門 茶の湯秘伝書と茶人宗二
本書は、『山上宗二記』の入門書である。宗二は、利休の弟子で堺の商人で、秀吉にも仕え当時の茶の湯の中心にいた人物でした。その内容は、宗二が弟子に伝えた茶の湯の歴史、名物の茶道具の覚書で、茶の湯が大成されつつある時代の姿を今に伝えています。
宗二は、天正11年(1582)に牢人となり、前田氏や高野山、北条氏のもとに行くが、それは、秀吉の政策、軍略と連動しており、水面下で秀吉とつながっていました。その間、大和郡山の豊臣秀長の茶堂になり、奈良の茶人松屋久政を訪ねています。天正18年に小田原城を脱出したあと秀吉に殺されていますが、それが知られる唯一の記事は、奈良のわび茶人で春日社禰宜の久保権大夫利世が残しています。奈良・京都・堺の茶人たちに加えた短評のなかには、奈良の茶人からの情報源も多くあったことでしょう。
宗二は、世俗的遊興の場と違う茶の湯を追及し、それを禅本来の精神によって裏付けようとしました。のちに「一期一会」という言葉に要約された利休の肉声を、「一期に一度の参会の様に」という文で伝えています。