大和万葉旅行
本書がはじめて発刊されたのは、昭和39年(1964)なので、42年ぶりの復刊となります。
冒頭で、大和の山々(青垣山)と国原(奈良盆地)との関連が述べられ、本文扉の前にある「大和の山」と「大和の川」の二つの地図は、万葉歌を育んだ風土を示しています。著者の風土への関心はこの里山への信仰や雨乞い習俗に対する関心に表れています。
折口信夫から万葉びとの生活や自然を直感することの大切さを教えられた著者は、特に神体山や巨石に対する信仰など民俗学の視点から大和の風土をみて、万葉歌の理解を深めようとします。
著者は、「万葉びとのながめた自然、丘陵や山、その上にひろがる青い空を見上げながら、秋風に一日吹かれて行く大和の旅は楽しい」といい、「万葉の歌を口ずさんだり、地図の上に赤い鉛筆で記しをつけて、道や山川のあとを思いうかべるたのしさは、万葉旅行ならではのものである」ともいいます。奈良盆地で育ち、奈良に住んで万葉を研究していた著者ならではの万葉の旅への誘いの書です。