氷室神社文化興隆財団

古代の風景へ

古代の風景へ

千田 稔:著 東方出版

日本列島では、中国のことを意識しながら歴史を編んできました。遣唐使が唐の皇帝の前に、蝦夷を連れ出しているのは、自国が「蛮族」を従えていることを示すためです。平城京の羅城も、羅城門の左右にしか造られておらず、中心部を外れるほど町並みは整っていませんでした。これは、異国の使節の視線が届くところだけを美しく整えたからでした。

一方、壁画古墳の被葬者は、天空の世界に昇るという考え方から、石室は天あるいは「神仙世界」をイメージされていました。また、宮都は、道教の三神山を配置した神仙境=常世に見立てながらも、場所としての認識は「天」でした。それは「天皇」号に関係するといいます。墳墓や都城に宇宙をみようとするのは、人間の心が常に秩序ある空間を呼び込もうとするからであるといいます。

著者は、古代の風景から古代人の思想や考え方を指摘して、古代人の心の風景に入っていこうとしているように思われている。