氷室神社文化興隆財団

上方能楽史の研究

上方能楽史の研究

宮本圭造著 和泉書院

江戸期の上方では、江戸幕府の武家式楽の能とは異なる独自の能楽文化が花開いていました。

本書では、南都禰宜衆の演能活動が大きく取り上げられています。禰宜の演能活動の歴史は、南北朝からの長い歴史を持っていました。はじめは南都が活動の中心であった禰宜衆は、近世初期には京都を舞台に禁裏御所の演能のほか、女能の一座にも加わり、風流踊りに囃子方として参加するなど幅広い芸能活動を展開していました。

寛永年間には猿楽四座役者と師弟関係を結び、特定の流儀に属すようになります。諸藩に御役者として召抱えられる禰宜役者が続出し、尾張藩・仙台藩・熊本藩をはじめ、東北から九州の諸藩に及んでいました。一方で、畿内を活動の拠点に据えて京・大坂・南都で活動する榊原次郎太夫のような禰宜役者がいました。また、村々の神事能で活躍する禰宜役者の活動は、南山城・大和・河内・近江・伊賀・紀伊の地域にまで及んでいます。

南都禰宜衆は百人近い役者を擁しており、彼らの近畿一円での旺盛な演能活動を見直すことは、芸能史研究の上で大きな意味があるといいます。