氷室神社文化興隆財団

中世寺院の姿とくらし―密教・禅僧・湯屋―

中世寺院の姿とくらし―密教・禅僧・湯屋―

国立歴史民俗博物館編 山川出版社

法隆寺・東大寺・興福寺・薬師寺などは、古代寺院のイメージをもつが、中世社会でも大きな役割を果たしていました。

本書は、中世寺院がどのように多様な社会的機能を果たしたのかをテーマにしています。この中で、旧仏教(顕密仏教)が中世寺院の中核だったことや、民衆生活に根付いていたこと、中世の僧侶が「諸宗兼学」といって、密教僧と禅僧と律僧が同じものを勉強するのが通例で、神も仏も一体として信仰していた様子を指摘する。

鎌倉仏教は、法然・親鸞・道元・日蓮などの鎌倉新仏教の時代というイメージだが、彼らの社会的影響力は想像以上に希薄です。他方、旧仏教が中世社会に及ぼした影響力は美術・建築・芸能・音楽、いずれをとってみても、巨大なものがあります。今や古代・中世仏教史の筋立ては、鎌倉仏教を民衆仏教とする理解が退けられ、旧仏教の中世的発展の時代として据え直されています。

研究者の最新の成果をわかりやすく紹介した刺激的な一書です。